2018/09/17

京町家コテージ Karigane


初めまして、下岡広志郎と言います。

自分は以前、妻と共に世界一周の旅をしました。南米6か月、アフリカ1か月、ヨーロッパ3か月、トルコから西安までのシルクロードを3か月、中国西部やネパールのチベット仏教圏を3か月、インドを1か月。合計で1年5か月かけて日本に帰ってきました。

旅の道中、多くの人に出会いました。各国の現地人はもとより、アメリカ、イギリス、ドイツ、中国、韓国、タイ、カンボジアなど世界中から出てきた旅人とも。

世界には、様々な文化があります。一つの国の中に、違った民俗が暮らし、風土に合った衣食住で、それぞれの言葉を話す。時に、民族同士が互いに忌み嫌い合っている、なんてこともあります。が、自分の目にはどちらも甲乙はつけられない、理にかなった美しい生活を営んでおられると感じます。

旅先で、日本の話になることはよくあります。日本の事は嫌いだ、と仰った方もいらっしゃいますが、多くの場合が肯定的で、親しみと敬意があり、『その神秘に迫りたい』という興味に満ちています。

日本で生まれ育った日本人として、それは誇らしくもあり、しかし同時に恥ずかしくもありました。自分は、日本について多くの事を知らない。彼らの興味に対して明確な答えを持ち合わせていない。彼らに誤解があったとしてそれを正すことができない。

ポップカルチャーから伝統芸能まで、世界中の人を惹きつける『日本の文化』をもっと深く知りたい。世界中の人に伝えたい。そんな思いが、京都でゲストハウスを立ち上げるという事業の原点です。

茶道、茶の湯という文化が日本にはあります。アルゼンチンの人々はいつでもどこでもマテ茶を飲んでいます。エチオピアの人々は路上で車座になってコーヒーを嗜みます。トルコの人々は砂糖たっぷりの紅茶を片手に仕事をこなします。インドに行けば、列車の中だろうが寺院の前だろうが、朝だろうが夜だろうが、どこでもチャイが手に入ります。

お茶あるいはコーヒーを楽しむ『喫茶』という文化は、どこの国にもある。けれど、同じものは一つもない。どこの国の喫茶文化も素晴らしいものでした。

日本の茶の湯という喫茶文化も、またユニークで面白いものです。季節を感じる掛け軸、花、飾り、道具。自然の景色、音を楽しみながら、お菓子と共にお茶を一服。という、それだけであれば、日本の喫茶文化の面白みを語りつくせていません。その瞬間ごとのお茶を楽しむ、というコンセプトはむしろ世界共通と思います。

しかし日本の喫茶文化は、茶道という、ちょっと行き過ぎたくらいのルールやマナーを作ります。ホストならば、茶碗をどうやって温め、抹茶をどうやってすくい、お湯を汲んだひしゃくはどうやって持ち…といった全ての動きが決められています。ゲストもやはり、茶碗をどうやって受け取り、お茶を飲み、ホストに返すか。全てが決まっています。

お茶を一杯飲むために、なんと堅苦しい!と、自分もかつては思っていました。しかし自分の宿の近くにある大徳寺、瑞峯院というお寺で茶道を習い始め、意識が変わりました。

一つ一つのルールが緊張感を高め、邪念を消し、感覚が鋭敏になって、結果、よりお茶の味を感じることができるようになる。また、ゲストとホストで、無用とも思える堅苦しいルールやマナーを互いに守り、尊重し合うことで、友情ともいえる一体感を得ることも出来る。

一杯のお茶が、自分の感受性を高め、友を作る。昔の日本人は、お茶と言う飲み物にこんな願いを込めていたのかと、驚きました。

日本の茶道、茶の湯が『世界で最高の喫茶文化だ!』なんてことは思いません。ただ、世界で類を見ないユニークな喫茶文化であることは間違いないと思います。

抹茶ラテや抹茶アイスも大好きです。しかし、たまーに背筋を伸ばして本格的な『茶の湯』を味わってみるのも、なかなか楽しいものですよ。

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下岡広志郎

夫婦で1年5か月の世界旅行。帰国後、大徳寺より徒歩一分、元茶道教室の町家を大工や左官職人である友人たちと共に9か月をかけて修復し、一棟貸しの宿「京町家コテージkarigane」を開業。お客様の目の前で、盆点前にてお抹茶を点ててのお迎えが、国内外からのお客さまより好評を得ている。https://rokushou.net/karigane/

Comments

  1. M. Saito より:

    町家コテージKariganeの写真はとても綺麗ですね。
    これを見て泊まりたいと思う人が大勢現れるのではないでしょうか。

    • 下岡広志郎 より:

      ありがとうございます!たくさんの人と出会い、相互理解を深めるこの事業が、自分たちが僅かばかりでも世界平和のために貢献できる手段だと考えています。Saito様のお言葉は、励みになります!

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