2018/10/15

裂織の布1


裂織の布1

By 斉藤正光

裂織という技法の布があります。
これは使い古した布を細く裂いて、横糸として織り込んでいくいわば
布のリサイクルです。
私が小さかった頃はまだ布が貴重だったので、近所のおばあさんたちが古くなった布をせっせと裂いては、裂織の布を織っていたのを覚えています。
こうして裂かれて織られた布は当時、敷物になったり背負子の肩紐になったりと、もう一度生活の中で活用されていました。
裂織は綿を使ったものが多いのですが、綿は裂織にするとどうしても重たくなるので、絹を裂いたもので織った方が衣類には向いています。
先日、東京の古民芸と古布を扱う「もりた」で藍染の薄い絹の布を沢山分けてもらうことができたので、私もこれを使って裂織の布を織ることを考えました。

早速、織物に詳しい方から裂織の作家を紹介してもらい、藍色の布で裂織の表情や質感が美しいものを織って欲しいとお願いしたところ、
裂織は何種類かの色の布を混ぜた方が、より独特の色合いや質感が生まれるのだそうで、同じ色だけ混ぜても色に深みが出ないとのこと。
そこで、何種類かの藍色の布に茶色の布も混ぜてもらい幾つかの試し織をしてもらいました。
裂織は出来上りをある程度予測できるものの、元々の布の紋様が思わぬところに出たり、また布の混ぜ方によって予想とは違う色や表情になったりと、織ってみないどのようなものになるかわからない難しさと面白さがあるようです。

そうして出来上がった幾つかの試し織の中から選んで、
着尺としてこのようなものが出来上がってきました。

今、このとても綺麗な表情と深い色を持つ裂織の布を何に使おうかと
考えているところです。


斎藤正光
林業家、竹工芸収集家。
林業の傍ら、竹工芸作品のコレクション、また展覧会企画を行い、
飯塚琅玕齋展、ロイド・コッツェン展のプロモーション・コーディネートを担当。
現在、内外の美術館への竹工芸作品の提案、コレクターへのアドバイスなどを行なう一方、
竹工芸に関するTV番組や出版物の企画にも携わる。

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