2018/10/03

J-POP


by ヒカリ

日本に生まれ育って、昭和、平成という時代を生きるとアイドル文化に触れたことはあると思う。それがロックスターでも、アニメや漫画といった二次元でも、偶像化した何かに憧れる気持ちは、限られた時空間の中では幸せをもたらすものだ。
と言った前置きで紹介するのは、仏像である。

 

私は神社っ子なのであまりお寺さんには行かない。仏像マニアでもない。知識はない。それらはグーグルさんがよく御存知だ。
それ故に、そんな私がご縁あってお目にかかった中で、初心者だからお薦めでき、とりわけいつまでも印象に残っているほど生で見て衝撃を受け、気持ち悪いくらい長時間眺めた思い出がある仏像である。
そんなわけで、この記事は全て個人の見解であることをお許し願いたい。

ひとつは、奈良県桜井市の安倍文殊院にある、文殊菩薩像。
大きいだけじゃない、とにかくびっくりするほどイケメンだ。
お顔に圧倒され、舐めるように眺めまくった後に手元の説明文を読むと、鎌倉時代を代表する仏師快慶の作とあり、超有名じゃんと二度びっくりした。
鎌倉の美丈夫は現代人の心もくすぐる。イケメン好きは必見だ。
ふたつめは、奈良県生駒郡斑鳩町の中宮寺、菩薩半跏像。
高校で半跏思惟像と日本史の資料集に写真が載っていた国宝だが、その知識と免疫があった上でお会いした。
……もうね、ずっっっ……と眺めていられるのだ。
免疫があったにも関わらず、一瞬で魂を持って行かれた。
なんとも言えないその口元の微笑み、目の伏せ方、全体的なバランスの良さ。片足を組んだ半跏の状態がまた、ポーズとしてもかっこいい。人々が見上げることを前提に作られている。美人は三日で飽きると言うが、この菩薩様の美しさは飽きない。どの角度からでも、いつまでも見ていたい。

 

みっつめは、奈良県奈良市興福寺の、阿修羅像。
これは、阿修羅像をセンターに八部衆像として見ることができたのだが、色々突っ込むところ満載だったので、一部を抜粋。
まず、阿修羅像は超美男子だ。手足もすっきりスラリとしている。もう、指の感じとか仏師の方がよくこんな繊細に造ったよとか感動も色々あるのだが、素直に「かっこいいな~」という感じなのだ。目も大きく鼻筋もスラリ。どこか中性的な感じもある。
そして、阿修羅像を囲む他の像は屈強な甲冑姿だ。阿修羅像だけがゆるく衣を纏っていて、上半身が肌見せ半裸。むむ。
これ、どっかで見たことないか?と阿修羅像の目の前で考えていたら、思い当たった。

「ジャ○ーズ!!」

大手アイドル事務所の皆さん、阿修羅像と通じる何かがある……半裸でポーズを決める美男子……。
三体の大昔に造られた仏像を思い出すにつけ、日本人の美意識のDNAって、昔からそれほど大きくズレてはいないのかも知れないと感じる。一緒くたにしてはお互いに失礼かも知れないが、仏像もアイドルも人々を幸せにする存在としてそこに居て下さるのだ。
生き物としての輝きは一瞬であり、ほんの些細なことで陰ってしまう。だから、不変でいるために自ら変化をしていく。

仏像には、不変の美というものをそこに留めた目的も一端にはあるかも知れない。
見る我々は、そこにあるものを通してないものまでを想像し、それぞれが感じた美しさに浸ることができる。現実逃避だけにするか、未来のためにするかは己次第だ。

私は見た目のことしか紹介できないが、気になった仏像があれば、足を伸ばしてみられてはいかがだろうか。幸いなことにこれらは全て奈良県にある。奈良県はとても広いので、アイドルコンサートの物販の長蛇に並んだ気分くらいのゆったりした気持ちで、移動の旅路を楽しんで頂きたい。そして奈良は、知れば知るほど行きたいところばかり増える、歴史の深い場所なのである。
今年は大好きなアイドルグループが20周年を迎える。私もその限られた幸せな時空間をぜひ体験したい。
アイドルもザ・ジャパニーズカルチャーだなぁと思うのだ。


ヒカリのプロフィール:
京都在住の作家の卵兼ライター。登山好きで在来建築の大工の父、自然療法と茶道をかじった母のもとで、山や海、日本文化に触れて育つ。他に服飾デザイナークリエイターなどで活動中。

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