朝の稽古
by 友常理貴
十月の早朝、まだ日の出には早く、星が見えるほどに暗いです。あたり一面はしーんと静まり返っております。あの夏の猛暑が嘘であったかのように、肌寒いです。
白い稽古着に着替えて、道場におもむろに入ります。そして居合道の稽古を始めます。静寂の中、衣の擦れる音、床を踏む足の音、刀の刃音が道場内に響きわたります。
稽古しているとだんだんとしらんでまいりました。鳥たちが起き始めたのか、さえずる声が聞こえてきます。
すると突然、一縷の光が道場に差し込んできました。太陽が顔を出したのです。今日は快晴。雲ひとつなく澄み渡っています。日の光の暖かさを感じます。太陽の力を身体いっぱいに取り入れます。エネルギーに満ち満ち、稽古の激しさが増していきました。
昔の日本人は「朝の稽古」をとても大事にしていたと、私は先人達に教えられてまいりました。今日のような日はとても清々しい気分となります。太陽の光の力強さによって自分自身力がみなぎってまいります。また朝という時間、感覚がとぎすまされているのでしょうか、刻一刻と変化する大自然に敏感に気がつきます。そして身体の動きにも敏感になるのです。昼、夜の稽古も大事ですが、それ以上に朝というのは感覚が敏感となり、稽古から得るものは多いように感じました。もちろん曇りの日もあれば、雨の日もあります。それぞれ晴れの日と違った気づきがあります。
お稽古事は様々ありますが、上達するためには、感覚感性を磨くためには、「朝の稽古」を大事にしてみてはいかがでしょうか?
友常理貴のプロフィール
昭和63年(1988年)生。
大和古流二十一世当主友常天眼斎貴仁の三男として生まれる。
家傳の剣術、弓術、聞香、茶の湯など父から学ぶ
日本文化の発信に取り組む。
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