2018/12/01

融合する工芸 ―見つけた伝統のアシタ―


インタビュー: 前崎信也

作品:満田春穂と若宮隆志と田辺竹雲斎

「なぜ工芸には陶芸や漆芸、金工や木工といった分野があるのだろう?」「異分野の作家がつながるとどんな作品ができるのだろう?」異なる素材をあつかう作家が集まり、対等な関係でひとつのアートを生み出すことをテーマにした展覧会が、9月14日から24日まで銀座和光本店の和光ホールで開催されました。展示された作品は白磁の高坏に高蒔絵のテントウムシがのっていたり、金工と蒔絵で再現されたキラキラの蝶が幾何学的な竹の作品にとまっていたり。工芸の良いところを残しながらも、見たことがない作品ばかりで、遊び心が満載。
 
2014年10月に同会場で開催され話題になった「融合する工芸 ―出会いがみちびく伝統のミライ―」から4年ぶりとなったこの展覧会(2年前、大阪髙島屋での「融合する工芸 ―旅に出たヤドカリのはなし―」を含めると3回目)。監修は京都女子大学で美術史・工芸史などを教えておられる前﨑信也准教授。

作品:若杉聖子と若宮隆志

 

前崎:工芸の世界は少子高齢化や生活習慣の変化などが原因で窮地に立たされていると言われます。そんな厳しい状況を吹き飛ばすかのように国内外で活躍している作家たちが集まりました。前回から4年が経ちましたが、各々の略歴からもわかるように、メンバー全員が以前よりも遥かに忙しい毎日を過ごしています。
 
バイメル:確かに多くの来場者で会場は賑わっており、いつもの工芸の展覧会との違いは、何よりお客様が「楽しそう」なことでしたね。
 
前﨑:オススメのポイントは「わかりやすさ」です。工芸の歴史や、特別な技法の知識は不要で、現代アートにありがちな謎のコンセプトもありません。作品を前に直に作家と言葉を交わしてもらえれば、必ず目の前にある不思議で楽しい作品が理解でき、新しい世界の広がりを感じていただくことができます。

作品:笹井史恵と若宮隆志

バイメル:普段は陶磁、漆、金工、竹を使い個人で活動をする作家たちが、この1年半ほどの間、様々な組み合わせで作品を制作してきたそうです。
 
前﨑:今回、我々が自らに課したテーマは、「同じ作家同士でコラボレーションを続けると何が起こるのか」です。というのも、コラボレーションをテーマにする作品が近年工芸の世界で流行しています。その始まりのひとつに2013年に今回も参加している竹の田辺竹雲斎さんと蒔絵の若宮隆志さんが始めた竹と高蒔絵の作品がありました。しかし、そういった企画はほとんどが一過性のもので、継続されることはとても少ないのです。ですから今回は敢えて2年前の大阪展からほぼメンバーをかえませんでした。「お互いの技術を理解しあった中でコラボレーションをするとどんな作品が生まれるのか?」を知りたかったからです。

作品:笹井史恵と田辺竹雲斎

 

バイメル:なるほど、だから私もこれまでの工芸コラボレーションとは違う印象を受けたんですね。完成度の高さと、ヴィジュアルの新しさはきわだっていました。
 
前﨑:皆、とっても負けず嫌いなので、「親しき中にも闘いあり」です。今をトキメク作家たちが協力し共闘し、今回が最後になっても後悔したくないと制作した愛と努力の結晶の数々でした。これからも続けていくかは未定ですが、また機会があれば是非お越しください。ありがとうございました。

作品:若杉聖子と若宮隆志


「融合する工芸」監修 工芸史家 前﨑信也

 

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