by ヒカリ
観光で庭や寺を見学するのも良いが、日本特有の文化は目を潤すだけではない。日本人の心と体を癒してきたものの一つは、お風呂だと思う。各家庭に湯船があるだけでなく、銭湯もある。そして、日本には何と言っても温泉という、地球のパワーを直に頂けるものがあるのだ。古くから湯治場があるように、温泉に何度も時間をかけてゆっくりと浸かることにより、病気や怪我を治す効能を得る。
個人差や温泉の質にもよるが、各地の温泉にて常連さんに訊くと、肌がきれいになった、傷の治りが早かった、疲れや痛みが取れた、中には重い病に効いたなどというお話まである。かくいう私も、温泉の効能を体感している一人だ。心も体もほっとする。
温泉があるということは、この日本は森が豊かであり、その森が蓄えた水があり、そして火山があるということだ。日本の大地にはその血脈のように火山帯が走る。当然のように地震もある。
台風や地震、数々の災害に、現代の我々だけではなく、我々の祖先たちは、何度も耐え、乗り越えて来た。日本という国は過去に遡っても天災の多い国である。
多様な生物を見渡す限り、歴史的に生き残ってきた種は何だっただろうか。答えの一つは、変化した、もしくは進化したものたちであり、その種で最も生き残るための要素を得たDNA を持つ子孫を繋いで来たものたちだ。
環境が過酷にそのものの命を追いやるほどに、種は様々に変わった。ある種は食べ物を。ある種は場所を。ある種は、姿形を。
日本人は、この国の歴史が始まる遥か昔から、多くの天災に対応し、乗り越え、工夫をし、生きてきた。日本という大地に住み、災害に見舞われるほど進化してきた種であるとも言える。
今生きる日本人は、その進化してきた DNA の最新ヴァージョンである。我々の先祖を縄文時代から換算するとすれば、諸説あるが、1万3000年引き継ぎ続け、今ここにいるのだ。そう、だから、我々には備わっているのだ。決断し選びさえすれば、その身に宿る遺伝子の記憶は、必ず知恵と工夫を叩き出すはずだ。
湧き続ける温泉を無理矢理止めようとしても、別の大地を割って吹き上がる。
その力は、湧き続けるほどに、必ず大海へと流れ行く。
hot spring とはよく言ったものだ、人の熱い力も湧き続ければバネになる。
秋冬は温泉のベストシーズンだ。寒い時こそ体をあたためて、来春に備えたい。大地の恩恵をいただきに、今年は温泉も視野に入れて、海外ではなく日本を再発見してみてはいかがだろうか。
————————————————————-
ヒカリ:文筆業及び羽衣計画・製作を手掛ける「天空羽衣プロダクツ」代表。Instagram:lightsoundsworks
Comments