私は日本の竹籠が好きで、35年に渡り主に明治から現代までの
竹工芸作品を集めています。
しかし、最近はなかなか面白いものに出会えず、また、国内外に多くのファンが生まれてきたこともあり、価格が上がり良い物は簡単には手のでない金額になってきてしまいました。
そこで、なにか新しい興味の対象物がないかと思い、
「日本の手仕事」、「高い品質」、「探せばまだ沢山あるもの」、そして「高額でないもの」という条件で考えていたところ、心に響くものを見つけました。
それは、日本の織物です。
織物と言っても古い物ではなく、明治から戦後位の一般的な着物などの布です。
しかし、素材の質や織る、染色といった技術がとても高い物が多く、現代にも通用するモダンな柄なども沢山あって、しかもそのクオリティにくらべるととても安価です。
しかし、私は着物を着ませんし、また布だけ飾って眺めるということもないので、これらの生地を使いシャツやジャケットを作ってみることを思いつきました。
布はインターネットのオークションや神社の朝市のようなところで、
安価で美しいものを容易に見つける事ができます。
しかし、布についてももちろんですが、服を作ることは素人なので、
だれかの手をかりなければなりません。
そこで、インターネットで縫ってくれる人、デザインをしてくれる人を探し、お願いする事にしました。
これらを作ってくれる人はネットで探したという事もあり、彼等は必然的に若い人達です。
私は特別ファッションに詳しいわけでもないので、最初はオジさんと若者のちょっとぎくしゃくしたやり取りから始まるのですが、そのうち気心がしれてくると、こちらの言いたいこともわかってくれ、私の感覚の古さなども、時々気を使いながらも訂正してくれたりして製作は進行します。
やがて、彼らの影響で今の流行も多少理解でき、彼等と一緒にワイワイとやっているうちに、友人のような付き合いとなり、
少し若がえった気分も味わえます。
竹工芸の収集もそうですが、自分の興味の世界を広げていくと、
年齢や国、男女の別に関係なく同じ物が好きな人達と知り合いになれ、
新しい刺激が得られます。
何かを集めたり、作ったりすることはもちろん楽しい事ですが、
そのことを通じて誰かと繋がることが、私にとって実は一番楽しい事
だと実感しているこの頃です。
斎藤正光
林業家、竹工芸収集家。
林業の傍ら、竹工芸作品のコレクション、また展覧会企画を行い、
飯塚琅玕齋展、ロイド・コッツェン展のプロモーション・コーディネートを担当。
現在、内外の美術館への竹工芸作品の提案、コレクターへのアドバイスなどを行なう一方、
竹工芸に関するTV番組や出版物の企画にも携わる。
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