柿山伏 by 柳本勝海

3:30~6:30

ある山伏が柿の木を見つけ、柿を食べたさに、いろいろと試みた末に、その木によじ登ってついに柿を食べる場面です。
狂言では、ほとんど何もない舞台で、何かがあるつもりで演技がされます。山伏は「あれに大きな柿の木がある」と手で示し、柿の木があるつもりで演技をします。「礫を打ってかち落とそう」と言って、石ころを拾ったつもりで、それを投げます。観客もそれらの台詞を頼りに想像して鑑賞しないといけません。
小道具は時々使われますが、小道具の中には、いろいろな物に見立てられて使われること が多く、ここでも観客は想像力を働かせないといけません。
例えば、この狂言でも使われる「葛桶」があります。ここでは「上々の登りどころがある」と山伏はその「葛桶」を指して言いますから、柿の木の一部分か何かでしょう。決して「葛桶」、そのものではありません。
「葛桶」は他の狂言で、「切り株」や「茶壷」「床几」などにも見立てられて使われます。観客はその都度、小道具が何のつもりで使われているか想像しないといけません。

狂言は観客の想像力を期待して、演じ続けられてきたわけです。
「柿山伏」は、この場面の後、柿の木の持ち主が現れ、その山伏はおもしろいやり方で懲らしめられます。さて、どうなることでしょう。


書家 元狂言師 柳本勝海(ヤナギモトカツミ)

Author: Tetsuya Matsuda

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